測定器管理とは?校正・点検・トレーサビリティを実務経験者がわかりやすく解説

品質管理

はじめに

製造業では、ノギス、マイクロメータ、デジタルマルチメータなど、さまざまな測定器が使用されています。

しかし、測定器は購入してそのまま使い続ければよいわけではありません。

「測定器管理って何をするの?」

「校正と点検は何が違うの?」

「なぜ定期的に校正する必要があるの?」

「校正周期はどうやって決めるの?」

このような疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

測定器による測定結果が正しくなければ、製品の合否判定そのものが間違ってしまう可能性があります。

測定器管理とは、製品の品質を正しく判断できるように、測定器を適切な状態で維持・管理する活動です。

私は実際に、測定器をJCSS校正へ依頼する業務だけでなく、JCSS認定事業所で自社製品を校正する技術要員としても業務に携わってきました。

この記事では、その経験も踏まえながら、測定器管理の基本を初心者にも分かりやすく解説します。

この記事で分かること

  • 測定器管理とは何か
  • なぜ測定器の校正が必要なのか
  • 校正と点検の違い
  • 測定器管理で必要なこと
  • 校正周期の考え方
  • トレーサビリティとは何か
  • 実際の測定器管理で注意するポイント

測定器管理とは?

測定器管理とは、製品の検査や試験に使用する測定器について、その状態や校正期限、使用状況などを適切に管理することです。

例えば、製品の電圧を測定した結果が「5.00 V」だったとします。

しかし、使用したデジタルマルチメータ自体が正しく測定できていなければ、その「5.00 V」という結果をそのまま信用することはできません。

そのため、測定器についても継続的な管理が必要になります。

主な管理項目としては、

  • 管理番号
  • メーカー・型式
  • 製造番号
  • 使用部署
  • 校正日
  • 次回校正予定日
  • 校正周期
  • 校正結果
  • 使用可否

などがあります。

製品の品質を保証するためには、「何で測ったのか」「その測定器は正しく管理されていたのか」まで確認できることが重要です。

なぜ測定器を管理する必要があるのか

測定器管理が必要な最大の理由は、測定結果の信頼性を確保するためです。

例えば、本当は規格から外れている製品を、測定器の問題によって「合格」と判定してしまったらどうなるでしょうか。

不適合品がお客様へ流出する可能性があります。

反対に、本来は合格している製品を不合格と判定してしまえば、不要な廃棄や手直しが発生します。

つまり測定器の状態は、製品品質だけでなく、生産コストや顧客からの信頼にも関係しています。

「製品を測る前に、その測定器を信頼できる状態にしておく」ことが測定器管理の基本です。

測定器管理で行う主な業務

① 測定器台帳による管理

測定器を適切に管理するためには、まず「どの測定器を保有しているのか」を把握する必要があります。

そのために使用されるのが測定器台帳です。

測定器ごとに管理番号を付け、

「どこにあるのか」

「誰が使用しているのか」

「いつ校正したのか」

「次回校正はいつなのか」

などを管理します。

測定器の数が増えるほど、台帳による管理は重要になります。

② 校正期限の管理

測定器には、会社で定めた校正周期に基づいて次回校正日を設定します。

例えば、「1年ごと」「6か月ごと」などです。

校正期限を過ぎた測定器をそのまま使用すると、測定結果の信頼性を説明できなくなる可能性があります。

測定器は「校正したか」だけでなく、「校正期限内で使用されているか」を管理することが重要です。

③ 測定器の識別

現場では、

「校正済みなのか」

「校正期限はいつなのか」

「使用してよい測定器なのか」

が分かる状態にしておく必要があります。

そのため、校正ラベルや管理番号などを使用して測定器を識別します。

④ 記録の管理

校正を実施したら、その結果を記録として残します。

校正証明書や校正結果などを適切に保管しておけば、監査や品質問題が発生した際にも確認できます。

校正とは?

校正とは、簡単にいうと、

測定器が示した値と、基準となる値との関係を確認することです。

ここで初心者が間違えやすいポイントがあります。

校正=調整ではない

「校正をすれば測定器が正しい値に直る」

と思われることがありますが、校正と調整は同じではありません。

校正によって測定器の状態を確認し、必要に応じて別途調整などを行う場合があります。

この違いは、測定器管理を理解するうえで重要です。

校正と点検の違い

「校正」と「点検」も混同されやすい言葉です。

項目校正点検
主な目的測定値と基準値の関係を確認測定器の状態を確認
確認内容測定値外観・動作・機能など
実施時期定めた周期など使用前・定期など
役割測定結果の信頼性確保異常の早期発見

例えば、使用前に測定器の外観や動作を確認することは点検にあたります。

一方、基準となる標準器などと比較して測定値との関係を確認するのが校正です。

校正と点検は目的が異なるため、両方を適切に行うことが重要です。

校正周期はどうやって決める?

「測定器は必ず1年に1回校正しなければならない」

と思っている方もいるかもしれません。

しかし、すべての測定器を一律に同じ周期にするのではなく、使用状況などを考慮して適切な周期を設定することが重要です。

例えば、

  • 測定器の安定性
  • 使用頻度
  • 使用環境
  • 過去の校正結果
  • メーカー情報
  • 測定結果が製品品質へ与える影響

などを考慮します。

校正周期は「何となく1年」ではなく、その周期で測定器の信頼性を維持できる根拠を考えることが大切です。

トレーサビリティとは?

測定器管理を勉強すると、計量トレーサビリティという言葉が出てきます。

初心者には少し分かりにくい言葉ですが、測定結果の信頼性を考えるうえで非常に重要です。

簡単に説明すると、測定結果が校正の連鎖を通じて、適切な基準へ結び付けられている状態を指します。

「この測定器の値は、何を基準としているのか」

をたどっていけるイメージです。

測定器管理では、単に校正するだけでなく、測定結果のトレーサビリティを確保することが重要です。

JCSS校正と測定器管理の関係

測定器の校正方法の一つにJCSS校正があります。

JCSSでは、ISO/IEC 17025などの要求事項に基づいて認定された校正事業者が校正を行います。

私は測定器をJCSS校正へ依頼する業務と、JCSS認定事業所の技術要員として校正を行う業務の両方を経験しました。

依頼する側と校正する側の両方を経験すると、単に「校正証明書が返ってくれば終わり」ではなく、測定器を継続的に管理することの重要性がよく分かります。

JCSS校正について詳しく知りたい方は、こちらの記事で仕組みや一般校正との違いを解説しています。
JCSS校正とは?一般校正との違いやメリットを実務経験者が分かりやすく解説

実際の測定器管理で重要だと感じたこと

実際に測定器管理や校正業務に携わって感じたのは、「校正に出せば終わりではない」ということです。

特に重要なのが、校正結果を確認することです。

校正から戻ってきた測定器について、

「結果に問題はないか」

「これまで使用してきた測定結果に影響するような変化はないか」

などを確認する必要があります。

また、測定器を社外校正へ出す場合には、校正前後の状態についても考える必要があります。

実際にJCSS認定の更新審査を受けた際にも、常用参照標準を社外校正へ依頼する前後で、機器の測定値の妥当性をどのように確認しているかについて質問を受けました。

この経験からも、測定器管理は単なる期限管理ではなく、測定結果の信頼性を継続的に確認する活動だと感じています。

JCSS認定審査では、測定器や標準器の管理について実際に質問を受けました。審査の流れや実際に受けた質問はこちらで紹介しています。
JCSS認定審査とは?実際に更新審査を受けた技術要員が流れ・質問内容を解説

測定器管理とISO/IEC 17025

ISO/IEC 17025では、試験・校正結果の信頼性を確保するため、設備や計量トレーサビリティなどについても要求されています。

特に校正を行う試験所・校正機関では、

「どの設備を使用したのか」

「適切に管理されているのか」

「測定結果の信頼性を説明できるのか」

といった点が重要になります。

ISO/IEC 17025そのものを初めて学ぶ方は、こちらから読むと理解しやすくなります。
ISO/IEC 17025とは?JCSSとの関係や要求事項を実務目線でわかりやすく解説

測定器管理と測定の不確かさ

測定器管理をさらに深く理解するうえで避けて通れないのが、測定の不確かさです。

同じものを測定しても、測定値が毎回完全に同じになるとは限りません。

測定器の分解能、繰り返し測定、環境、測定方法など、さまざまな要因が測定結果に影響します。

測定の不確かさについては、8記事目で初心者向けに詳しく解説しています。
測定の不確かさとは?誤差との違いや考え方を初心者向けにわかりやすく解説

測定器管理でよくある注意点

校正期限だけを管理してしまう

「期限内だから問題ない」と考えるのではなく、日常的な点検や使用状態の確認も重要です。

校正結果を確認しない

校正証明書を受け取って保管するだけではなく、結果そのものを確認する必要があります。

測定器に異常があった場合の影響を考えていない

測定器に問題が見つかった場合、その測定器を使って過去に測定した製品への影響についても確認が必要になる場合があります。

測定器管理で重要なのは「校正したという事実」ではなく、「その測定器を使った測定結果を信頼できる状態にすること」です。

測定器管理の基本的な流れ

測定器管理を大まかに整理すると、

測定器を登録

管理番号を付与

校正・点検

結果を確認

使用

期限・状態を管理

次回校正

という流れになります。

このサイクルを継続することで、測定器の信頼性を維持します。

まとめ

測定器管理とは、単に測定器を一覧表で管理したり、定期的に校正へ出したりするだけの仕事ではありません。

測定器管理の目的は、測定結果の信頼性を維持し、正しい測定結果に基づいて製品の品質を判断できる状態を作ることです。

そのためには、

  • 測定器台帳
  • 校正
  • 点検
  • 校正周期
  • 記録管理
  • トレーサビリティ
  • 校正結果の確認

などを適切に管理する必要があります。

私自身、JCSS校正を依頼する側と、JCSS認定事業所で校正を行う技術要員の両方を経験してきましたが、測定器の信頼性を「維持し続ける」ことの重要性を実務を通じて感じています。

測定器管理を理解すると、JCSSやISO/IEC 17025、測定の不確かさについても理解しやすくなります。

品質管理や品質保証に携わる方は、ぜひ測定器管理についても理解を深めてみてください。

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